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定常性 とは
定常性は、「同時分布」や「基本統計量」の時間不変性 (時間に影響されない) によるものである.
つまり、時系列データの変化の安定の度合いといえる.
なぜ定常性を考えるのか
「時系列データの長期的な過去の挙動」は、
「時系列データの長期的な将来の挙動」にどのくらい反映されるのかというは、
時系列の解析において重要になるからである.
つまり、過去の時系列データに定常性があると、考えることができれば、
その仮定を元に将来への予測などを容易にすることができる.
定常的と非定常的
定常性の有用性を考えたところで、
まずは、定常性のある (=定常的) な時系列について考える.
定常的な時系列データとは、
であるが、これが正確に意味することを断言するのが難しい場合もある.
(つまり、定常でないとして排除する方が、定常であるというよりも簡単な場合もある.)
そこで、まず、定常的でないデータ (=非定常的)の例を考えることで、直感的に定常性を理解する.
以下の図は、「航空旅客データ」をプロットした.
- Monthly Airline Passenger Numbers 1949-1960
この過程が定常でないことを示す特徴がいくつかある.
- 時系列が進んでいくと、ある区間の平均値が、増加していて、一定でない.
- 1 年ごとの山と谷の間の距離が増加しているため、ある区間の分散も時間とともに増加していて、一定でない.
- この過程は、強い季節性を示している.
定常性の単純な定義
非定常性から、直感的に定常性を考えたが、さらに理解をするために、
定常過程の単純な定義を述べる.
2 つの定常性
定常性は、何を不変とするかによって、
弱定常性 / Weak Stationarity と 強定常性 / Strict Stationarity の 2 つに分類される.
弱定常性 / Weak Stationarity
弱定常性は、過程の期待値と自己共分散が時間を通じて一定であることを要求する.
定常過程においては、自己共分散は、時点 には依存せずに、時間差 のみに依存することになる.
強定常性 / Strict Stationarity
これに対して、強定常性は同時分布が不変であることを要求する.
その名前の通り、強定常性は弱定常性より強い概念であり、 過程の分散が有限であるならば、強定常過程は、弱定常過程となる.
さらに直感的な話
弱定常過程は、過程の自己相関構造
(つまり、異時点のデータ間の線形依存関係が時点 に依存せずに、時間差のみに依存すること)
を必要するのに対して、
強定常過程は、異時点のデータ間において、線形依存関係だけでなく、
すべての形の依存構造が時点 に依存せずに時間差のみに依存することを必要とする.
正規過程 / Gaussian Process
一般的に、弱定常過程が強定常過程であるとは限らないが、重要な例外が存在する.
それは正規過程 / Gaussian Process と呼ばれる過程であり、
正規過程は、以下のような過程で定義される.
多変量正規分布は、期待値と共分散によって完全に決定されるので、
弱定常正規過程は、強定常過程となる.
つまり、正規過程に関しては、強定常と弱定常は同値となる.
経済・ファイナンスの分野では
経済・ファイナンスの分野では、単に、定常性というと、弱定常を指すことが多い.
その理由としては、経済・ファイナンスの分野では、期待値や自己相関などの性質の分析が主な目的であり、
その議論には強定常性の仮定を必要としないからである.
また、強定常性の仮定は非常に強い仮定であり、データから検証することが困難なことなども挙げられる.
参考
書籍
計量時系列分析
- 1 時系列分析の基礎概念
- 1.2 定常性
- 1 時系列分析の基礎概念
実践 時系列解析
- 3 時系列の探索的データ解析
- 3.2 時系列専用の探索的手法
- 3.2.1 定常性とは
- 3.2.1.1 直観的な説明
- 3.2.1.2 定常性の定義と拡張ディッキー - フラー検定
- 3.2.1 定常性とは
- 3.2 時系列専用の探索的手法
- 3 時系列の探索的データ解析
Web サイト
- 【時系列分析の基本】定常性とホワイトノイズを分かりすく解説