オムライスの備忘録

数学・統計学・機械学習・プログラミングに関することを記す

【時系列解析】定常性

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定常性 とは

定常性は、「同時分布」や「基本統計量」の時間不変性 (時間に影響されない) によるものである.

つまり、時系列データの変化の安定の度合いといえる.



なぜ定常性を考えるのか

「時系列データの長期的な過去の挙動」は、
「時系列データの長期的な将来の挙動」にどのくらい反映されるのかというは、
時系列の解析において重要になるからである.

つまり、過去の時系列データに定常性があると、考えることができれば、
その仮定を元に将来への予測などを容易にすることができる.

定常的と非定常的

定常性の有用性を考えたところで、
まずは、定常性のある (=定常的) な時系列について考える.

定常的な時系列データとは、

測定した時系列データが、ある区間のデータの定常状態を反映するもの



であるが、これが正確に意味することを断言するのが難しい場合もある.
(つまり、定常でないとして排除する方が、定常であるというよりも簡単な場合もある.)

そこで、まず、定常的でないデータ (=非定常的)の例を考えることで、直感的に定常性を理解する.

以下の図は、「航空旅客データ」をプロットした.



この過程が定常でないことを示す特徴がいくつかある.

  1. 時系列が進んでいくと、ある区間平均値が、増加していて、一定でない.
  2. 1 年ごとの山と谷の間の距離が増加しているため、ある区間分散も時間とともに増加していて、一定でない.
  3. この過程は、強い季節性を示している.

定常性の単純な定義

非定常性から、直感的に定常性を考えたが、さらに理解をするために、
定常過程の単純な定義を述べる.

定常性の単純な定義

時刻  t と、ある過程の取り得るすべての時間差 (ラグ)  k について、

 y_{t},\ \cdots,\ y_{t+k} の (標本)分布が、時刻  t に依存しない.



2 つの定常性

定常性は、何を不変とするかによって、
弱定常性 / Weak Stationarity強定常性 / Strict Stationarity の 2 つに分類される.

弱定常性 / Weak Stationarity

弱定常性は、過程の期待値自己共分散が時間を通じて一定であることを要求する.

弱定常性 任意の  t,\ k に対して、


\begin{align}
E[y_{t}]\ &=\ \mu \\
Cov (y_{t},\ y_{t-k})\ &=\ E[(y_{t}\ -\ \mu)(y_{t-k}\ -\ \mu)]\ =\ \gamma_{k}
\end{align}



が成立する場合、過程は弱定常性 / Weak Stationary といわれる.



定常過程においては、自己共分散は、時点  t には依存せずに、時間差  k のみに依存することになる.

強定常性 / Strict Stationarity

これに対して、強定常性は同時分布が不変であることを要求する.

強定常性 任意の  t,\ k に対して、

 
y\ =
\begin{pmatrix}
y_{t} \\ \vdots \\ y_{t+k}
\end{pmatrix}
の同時分布が同一



となる場合、過程は強定常 / Strict Stationarity と言われる.



その名前の通り、強定常性は弱定常性より強い概念であり、 過程の分散が有限であるならば、強定常過程は、弱定常過程となる.

さらに直感的な話

弱定常過程は、過程の自己相関構造
(つまり、異時点のデータ間の線形依存関係が時点  t に依存せずに、時間差のみに依存すること)
を必要するのに対して、

強定常過程は、異時点のデータ間において、線形依存関係だけでなく、
すべての形の依存構造が時点  t に依存せずに時間差のみに依存することを必要とする.

正規過程 / Gaussian Process

一般的に、弱定常過程が強定常過程であるとは限らないが、重要な例外が存在する.

それは正規過程 / Gaussian Process と呼ばれる過程であり、
正規過程は、以下のような過程で定義される.

任意の  t,\ k に対して、
 
y\ =
\begin{pmatrix}
y_{t} \\ \vdots \\ y_{t+k}
\end{pmatrix}
の同時分布が多変量正規分布となる.



多変量正規分布は、期待値と共分散によって完全に決定されるので、
弱定常正規過程は、強定常過程となる.

つまり、正規過程に関しては、強定常と弱定常は同値となる.

経済・ファイナンスの分野では

経済・ファイナンスの分野では、単に、定常性というと、弱定常を指すことが多い.

その理由としては、経済・ファイナンスの分野では、期待値や自己相関などの性質の分析が主な目的であり、
その議論には強定常性の仮定を必要としないからである.

また、強定常性の仮定は非常に強い仮定であり、データから検証することが困難なことなども挙げられる.

参考

書籍

Web サイト

  • 【時系列分析の基本】定常性とホワイトノイズを分かりすく解説